日本心臓血管外科学会雑誌
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特発性血小板減少性紫斑病を合併した僧帽弁再置換術の1治験例
内外報告10例の集計も含めて
吉田 英生寒川 顕治榊原 裕末広 晃太郎岡田 正比呂七条 健大庭 治
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1993 年 22 巻 4 号 p. 372-375

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抄録

特発性血小板減少性紫斑病 (ITP) を合併した症例の開心術の報告は少なく, 内外の文献で10例を数えるにすぎない. ITPおよび糖尿病を合併した僧帽弁再置換術症例を経験したので報告する. 症例は62歳, 男性で, 10年前僧帽弁狭窄症にて Carpentier-Edwards 弁を用いた僧帽弁置換術を受け, 今回同弁機能不全と診断され入院した. 入院時検査で血小板数は52,000/mm3と著明に減少し, PA-IgGの増加, 骨髄検査所見よりITPと診断した. 術前4週間プレドニゾロンを投与し, 術前5日間はγグロブリン大量投与 (20g/日) も行ったが, 手術開始時の血小板数が56,000/mm3のため体外循環前より濃厚血小板血漿を投与し, 術中最低血小板数は37,000/mm3であった. SJM弁で再弁置換術を施行し, 術中術後に血小板輸血を行い術後経過は良好であった. ITP合併症例に対してはγグロブリン, ステロイドおよび脾摘を組み合わせた周術期治療に加え, 効果の確かな血小板輸血を適宜行うことが必要と考えられた.

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