逆行性持続脳灌流の有用性が報告され臨床例が増加しつつあるが, 上大静脈より送血する場合には内頸静脈弁の存在が大きな問題点の一つである. 剖検例32例で検討すると, 静脈角部には1例を除いて全例に静脈弁が存在し, 右側では69%, 左側では34%で形態的に良好な弁が存在した. 静脈弁の機能を検討するため38例で心臓カテーテル検査時に右腕頭静脈で造影を行って弁存在の診断と弁機能を検討した. 右内頸静脈弁は39%に確認されたにすぎないが, 89%で逆流が認められた. 形態的には右内頸静脈弁のほうが良好であり, その機能的検討で, 約90%で逆流が認められたことは, 上大静脈から送血した場合にはほとんどの症例で灌流が可能なことを示していると考えられるが, 少ない症例ではあるが, 上大静脈からの送血では灌流できない症例の存在は否定できず, 逆行性持続脳灌流施行時に注意すべき点と考えられる.