日本心臓血管外科学会雑誌
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血漿成分が後腹膜腔へ漏出貯留したと考えられる総腸骨動脈瘤切迫破裂の1症例
山田 眞舟波 誠横川 秀男賀嶋 俊隆井上 恒一高場 利博
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1993 年 22 巻 1 号 p. 49-53

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抄録

後腹膜腔にゼラチン様物質の貯留を伴った, 動脈瘤切迫破裂の一例を経験した. 症例は69歳, 男性. 左下腹部の膨満感と軽い疼痛があり, CTにて左総腸骨動脈瘤を認めた. 5日後, 急激な疼痛の増強がみられたため再度CTを施行し, 左後腹膜腔の low density mass を認めた. 緊急手術によりY型人工血管移植術を施行した. 手術時, 左後腹膜腔に約600cm3の無色透明ゼラチン様物質の貯留を認めたが瘤破裂の所見はなかった. 術後42日目のCTでは low density mass は消失していた. ゼラチン様物質の電解質は, Na+ 115.8mEq/l, K+ 6.11mEq/l, Cl- 102.6mEq/lであり, 瘤壁を通じ血漿成分が後腹膜腔へ漏出貯留したものである, と推論した. きわめて特殊な症例であると判断したので, ここに報告する.

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