日本心臓血管外科学会雑誌
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心肺停止例に対する蘇生手段としての緊急経皮的心肺補助システムの使用経験
川人 宏次井手 博文井野 隆史安達 秀雄水原 章浩山口 敦司
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1994 年 23 巻 1 号 p. 15-20

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抄録

通常の心肺蘇生では心拍再開が得られなかった心肺停止例11例 (男性5例, 女性6例, 平均年齢59.3歳) に対して, 緊急経皮的心肺補助システム (PCPS) による心肺蘇生を行った. 対象は手術への bridge とした症例が2例, PTCAへの bridge とした症例が2例, 蘇生後も心肺補助を継続した症例が7例であった. 循環補助時間は10.5±9.1 (mean±S. D.)時間, 補助流量は2.5±0.7l/分, 心停止からPCPS開始までは5分から70分, 平均24.9分であった. 回路はヘパリンコーティングを主とした抗血栓性材料でコーティングし, activated coagulation time を約150秒で維持した. これら10例中30日以内の早期生存は6例 (54.5%), 長期生存は4例 (36.4%) であった. 合併症として脳神経後遺症2例, 縦隔炎1例, 人工弁感染1例, 敗血症1例が発生した. PCPSによる救急蘇生は, 慢性期の脳合併症, 感染が問題となるが, 従来の心肺蘇生に反応しない心肺停止例を救命できる可能性が高く, 新しい心肺蘇生法としての有用性が示唆された.

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