日本心臓血管外科学会雑誌
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慢性透析患者に対する冠動脈再建術の経験
山本 晋笹栗 志朗弘岡 泰正田原 稔菊地 憲男川崎 志保理渡部 幹夫田中 淳細田 泰之
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1994 年 23 巻 1 号 p. 1-5

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抄録

慢性透析患者に対する冠動脈再建術において, 体外循環中の血液濾過法 (以下HF) により, 血液希釈率と電解質の管理を試みた. 対象は1988年1月より1989年12月までの間に当科で施行した慢性透析患者に対する冠動脈再建術7例であり, 症例の平均年齢は53歳, 性別はすべて男性であった. 慢性腎不全に対しては全例で術前より血液透析 (以下HD) を施行していたがこのうちの1例は入院後, さらに持続的腹膜透析 (以下CAPD) を施行し, HDとの併用によって管理した. 術中は体外循環回路にダイアライザーを組み込み, 回路内輸血 (1,270±372ml) および大量の輸液 (12,657±3,966ml) と限外濾過による除水 (18,300±5,628ml) によって電解質および血液希釈率の調整を行った. 術後は第3病日までの間に全例で2回以上のHDを施行した. 1例で術後低K血症を認めたほかは手術中および手術当日の電解質は適正に保たれ, 周術期の大きな血行動態の変化はみられなかった. 体外循環中のHFは, 術中HDと比較してより簡便であり, 短時間で施行できる点からも慢性透析患者における心臓手術に安全かつ有用な方法と考える.

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