日本心臓血管外科学会雑誌
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大動脈弁手術後の急性冠灌流不全の発症原因と対策
倉岡 節夫入沢 敬夫春谷 重孝金沢 宏小熊 文昭三浦 正道坂下 勲
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1994 年 23 巻 4 号 p. 223-229

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抄録

大動脈弁手術203例で, 術後急性冠灌流不全を右冠動脈5例, 左冠動脈2例, 両冠動脈1例の8例 (4%) に経験した. 主症状は, 右冠動脈灌流不全では, 体外循環離脱困難な右心不全3例, 下壁梗塞による左心不全2例, 左冠動脈灌流不全では, 広範梗塞による左心ポンプ不全1例, 心室停止2例であった. 発症直後CABGを追加施行した4症例は全例救命された. Cabrol 手術1例, Piehler 法と弓部置換の同時手術1例の死亡2例では左冠動脈口に縫着した人工血管の血栓閉塞を認めた. 救命6例は術後冠動脈造影で新たな冠動脈病変は認めなかった. 発症原因として, 冠動脈 spasm と拡張障害を伴った左室肥大心における周術期冠予備量の不足が推測された. Piehler 法や Cabrol 手術では冠動脈吻合グラフトの圧迫や吻合部狭窄も示唆された. 救命措置は灌流不全の冠動脈に速やかにCABGを追加する方法が確実であった. 予防対策として適切な手術時間の決定と, 逆行性冠灌流法を含む確実な心筋保護法の応用が考慮された.

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