1994 年 23 巻 4 号 p. 257-260
胸骨正中切開のアプローチによる心臓外科手術338例のうち, 初期の233例には胸骨切開時に骨ロウを使用したが, 7例 (3.0%) の縦隔炎が発生した. 7例のうち6例の縦隔炎に対しては, 創部開放洗浄ののちに大網を充填するという治療を行った. これら6例において全例とも縦隔炎は治癒したが, 1例のみ脳梗塞, 肺炎のために失った. この反省から, その後の105例には骨ロウを使用せずアルゴンビームコアギュレーターにて止血を行ったところ, 縦隔炎の発生は皆無 (0%) となった. 骨ロウは, 縦隔炎の発生に大きく関与している可能性があり, その使用については再検討が必要である. 胸骨切離面の止血にはアルゴンビームコアギュレーターを使用したが, 術中出血量, 術後出血再開胸の頻度などに差は認められず, 有用であった.