積極的胸膜切開下での内胸動脈 (ITA) グラフト剥離が胸膜温存した場合と比べて胸部合併症が多いか検討した. 対象はITA剥離を積極的胸膜切開下で行った50例 (I群) と胸膜を可及的温存した50例 (II群) とした. I群には左開胸例40例 (Ia群) と両側開胸例10例 (Ib群) があり, 胸膜は開窓のまま閉胸した. II群には胸膜を完全温存した22例 (IIa群) と胸膜穿孔を修復した28例 (IIb群) があった. I群はII群よりITA剥離時間が短く, 術後1週間以内の呼吸管理に関する因子では胸腔ドレーン排液量のみがIa群およびIb群でII群より有意に多かった. 術後1か月までの胸部合併症はIIa群以外で胸膜肥厚をわずかに認めたが, それ以外はIIb群に横隔膜神経麻痺に起因する胸水貯留を1例のみ認めた. 積極的胸膜切開法はITA剥離時間の短縮, ITA中枢側剥離の容易化, In-situ グラフト走行の最短化が得られる優れた術式で胸部合併症はほとんどなかった.