1994 年 23 巻 1 号 p. 33-37
体外循環を用いた手術後に生じた汎血管内凝固症候群 (DIC) に対して, nafamostat mesilate を投与し, その有用性についてDIC score と凝固線溶系項目から検討した. 対象は最近3年間の体外循環使用手術例293例中, DICと診断した12例. 敗血症を合併した1例を除き全例で, FUT投与により血小板数の改善を認め, DICから回復, 7例の生存が得られた. 血小板数, フィブリノーゲン, FDPの改善により, DIC score は最高値に比しFUT投与終了時には有意に減少した (p<0.01). トロンビン-アンチトロンビンIII複合体, D-ダイマー, プラスミン-α2プラスミンインヒビタ-複合体が, FUT投与終了時にも高値を示していたことから, 体外循環後に生じるDICでは, 線溶系の亢進が高度のものが多く, FUT投与によってもその抑制は完全ではなかった.