日本心臓血管外科学会雑誌
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著明な上行大動脈石灰化に対して aortic no-touch technique を用いた冠動脈再建術の経験
山本 晋布施 勝生成瀬 好洋渡邊 泰徳小林 俊也小西 宏明堀井 泰浩
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1994 年 23 巻 6 号 p. 385-388

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抄録

1988年1月より1992年12月までの間に当科で行った冠動脈再建術533例のうち, 術前より上行大動脈に高度の石灰化病変を認め, 上行大動脈に手術操作を加えることがきわめて危険であると考えられた6症例に対し, 上行大動脈遮断を行わず心室細動にて冠動脈再建術を施行した. 冠動脈再建術は大腿動脈送血, 右房脱血で体外循環を開始し core cooling にて最低直腸温21.6±1.6度の低体温とし, 心室細動または循環停止下に遠位側吻合を行った. 平均体外循環時間は226±42分, 平均バイパス数は2.2±0.4本であり, 術前より血液透析を行っていた症例と, 手術12日前に急性心筋梗塞を起こした症例は低心拍出量症候群 (以下LOS) となったが, それ以外の症例では中枢神経系合併症を含めた重篤な合併症は経験しなかった. 総グラフト数13本のうち術後の restudy を行った11本のグラフトはすべて開存しており, 術後胸部症状は全例で認められなかった. In situ grafts の使用, 低体温・心室細動下での遠位側吻合により有効な血行再建が可能であった反面, 術中の心筋保護が問題となった.

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