日本心臓血管外科学会雑誌
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Bentall 手術90症例の検討
適応疾患別にみた手術成績を中心に
榎本 栄宮本 忠臣岡林 均嶋田 一郎大野 暢久仁科 健湊谷 謙司亀山 敬幸伴 敏彦
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1994 年 23 巻 6 号 p. 399-403

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抄録

1975年5月より1991年8月までに当院において Bentall 手術および変法術式を施行した90例を対象とした. 適応とした疾患はAAE25例 (28%), Stanford A型解離19例 (21%), Marfan 症候群16例 (18%), 大動脈炎症候群12例 (13%), AR+上行大動脈瘤6例 (7%), 梅毒性大動脈炎5例 (6%), その他7例 (7%) であった. 病院死は15例 (17%) で長時間体外循環を必要とした解離症例 (7例) や再手術例で死亡例が多かった. 遠隔死は10例で解離症例, Marfan 症例での解離の再発 (5例) と大動脈炎症例での冠動脈, 大動脈の吻合部瘤 (2例) が多かった. 術後10年間の心大血管の event free rate は全症例で63.6%, 疾患別では特定疾患以外のAAEは92.0%と良好で, 大動脈炎症例 (68.8%), Marfan 症例 (61.9%), 解離症例 (47.3%) はこれに比べ不良であった. 冠動脈口をボタン状にくりぬいて Carrel patch 手技により冠動脈を再建する変法術式はすべての症例に対し有効で遠隔成績も良好であったが大動脈炎症例ではこれでも冠動脈吻合部瘤を生じ注意が必要と思われた. 再手術の成績は非常に悪く, 脆弱な冠動脈口への再吻合は出血の危険性が高いため症例によっては冠動脈バイパス術を併用したほうが安全と考えられた.

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