日本心臓血管外科学会雑誌
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腹部大動脈瘤の外科治療
とくに開腹既往症例に対する検討
須藤 憲一小石沢 正津田 京一郎林 信成小野 稔小久保 純藤木 達雄野中 健史池田 晃治
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1994 年 23 巻 2 号 p. 78-83

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抄録

1987年1月より1992年10月までに経験した腎動脈下腹部大動脈瘤手術症例60例について開腹術の既往のある症例とない症例との比較検討を行った. 開腹既往症例は11例であり, そのなかで破裂は2例, 切迫破裂2例. 非破裂7例であった. 破裂の1例を術中出血で失い, 切迫破裂の2例が遠隔死した. 非開腹症例との比較で死亡率に差はなかった. 破裂症例を除く開腹既往のある群 (A群: 9例) とない群 (C群: 37例) との比較を行ったが, 手術時間はA群287.3±89.4分, C群: 215.9±66.0分, 術中出血量A群: 1,792±1,391ml, C群: 1,392±871ml, 術後禁食期間A群: 5.4±1.4日, C群: 6.8±3.6日, 術後歩行開始時期: A群: 8.9±2.1日目, C群: 11.3±12.2日目. 術後入院期間: A群: 24.6±6.3日, C群: 37.2±43.8日ですべて有意差はみられなかった. これらの結果より開腹既往を有することは, 非破裂性腹部大動脈瘤手術のリスクファクターとはならないものと思われた.

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