日本心臓血管外科学会雑誌
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術前にショックを伴わなかった急性肺塞栓症の1治験例
松田 均太田 稔明小澤 修一岡田 昌義
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キーワード: 肺塞栓症, 肺塞栓除去術
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1995 年 24 巻 2 号 p. 112-116

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抄録

症例は, 73歳女性. 呼吸困難を訴え, 右房粘液腫の疑いで緊急入院となった. 来院時の心エコーでは右房内の腫瘤は消失しており, 肺動脈造影で両肺動脈内に巨大な血栓が確認された. ショックは伴わず, t-PAの投与により呼吸困難は改善し, 肺動脈圧も66から43mmHgに低下した. しかし, その後の肺動脈造影で血栓の形態が不変であったことから, 緊急に肺塞栓除去術を施行した. 手術により肺動脈内の巨大な血栓は除去されたが, 人工心肺の装着中に容易に心室細動に陥ったり, 体外循環からの離脱時には著明な低酸素血症を認めたが, これらの際には, 部分体外循環が有効であった. 術後の肺動脈造影では明らかな陰影欠損は認められず, 肺動脈圧も正常に復した. 急性肺塞栓症の治療に関しては, 線溶療法や抗凝固療法の報告が多いが, 塞栓除去術により良好な結果を得たので文献的考察を加えて報告する.

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