1995 年 24 巻 5 号 p. 337-340
腹部大動脈瘤と泌尿器悪性腫瘍の合併症例2例に対して同時手術を施行した. 症例1は70歳男, 解離性大動脈瘤 (DeBakey IIIb) の診断にて入院したが, 同時に腹部大動脈から右総腸骨動脈にかけての真性動脈瘤および左腎癌が発見された. 約1か月間の保存的療法により偽腔が血栓化されたため, 腹部大動脈人工血管置換術と左腎摘出術を同時に施行した. 症例2は75歳男, 以前より腹部大動脈瘤を指摘されていたが, 腎嚢胞の治療にて泌尿器科入院中に前立腺癌を発見され, 腹部大動脈人工血管置換術と前立腺全摘術を同時に施行した. 2症例共, 術後経過は良好で人工血管に対する感染兆候は認めず, 約1か月後には悪性腫瘍に対する補助療法にスムーズに移行できた. 泌尿器悪性腫瘍に合併した腹部大動脈瘤に対する一期的手術は, 手術順序および到達法に注意すれば安全に行え, 有効な方法であると考えられる.