1995 年 24 巻 2 号 p. 95-100
39症例の胸部・腹部大動脈血行再建術に Gelseal knitted Dacron graft を臨床応用しその有用性について検討した. 胸部大動脈瘤 (TAA) 10例, 腹部大動脈瘤 (AAA) 19例, 腸骨動脈領域疾患 (IAL) 10例に Gelseal graft 直管16本, Y graft 23本を用い血行再建術を施行した. 人工血管壁の針通過,吻合面の密着, 縦方向の伸展性などは良好で人工血管壁の漏血はみられなかった. さらに従来から用いていた knitted Dacron (Intervascular MICRON®) と Gelseal graft を非破裂性腹部大動脈瘤症例にて比較検討した. その結果, 出血量, 他家血輸血量, 血液生化学的検査, 血液凝固系検査で両群間に有意の変化は認められなかった. 以上より従来の knitted Dacron graft と比較し, 手術手技的に良好な吻合操作性を有し, preclotting が不必要であり, 十分な抗漏血性を持ち, 臨床に十分使用できる優れた人工血管であることが示唆された.