日本心臓血管外科学会雑誌
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腋窩-大腿動脈バイパス術後のグラフトに及ぼす体幹運動の影響について
山本 理江杉田 隆彰渡田 正二尾上 雅彦勝山 和彦中嶋 康彦田畑 良宏松野 修一森 渥視
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1996 年 25 巻 2 号 p. 109-112

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抄録

われわれはEPTFE人工血管を用いた右腋窩-大腿動脈バイパス術後, 右肋骨弓の尾側で非吻合部の人工血管断裂をきたした症例を経験した. この発生原因の一つとして, 体幹運動による人工血管への物理的負荷を考慮し, 健常者において実験を行った. 直立基本肢位にて, 右鎖骨中央より右ソケイ靱帯中央までの距離を測定し, この距離を3等分するようにマーカーを描いたものを基本位モデルとした. 次に, 各部位の距離が最長となる体位をそれぞれの部位での伸展位モデル, 最短となる体位を同様に屈曲位モデルとし, 各モデル間での各部位の距離の変化率 (%) を算出し検討した. 伸展位では中部で有意に伸展しており, 屈曲位では下部が有意に短縮していた. 腋窩-大腿動脈術後のグラフトでは, 体幹運動により, 中部および下部にて伸展, 屈曲の物理的負荷がかかるものと考えられ, この負荷により遠隔期に人工血管の断裂をきたす可能性が疑われた.

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