日本心臓血管外科学会雑誌
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81歳高齢者の心不全を合併した巨大左房粘液腫の1治験例
荒木 善盛末永 義人田嶋 一喜吉川 雅治阿部 知伸井尾 昭典
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キーワード: 左房粘液腫, 高齢者, 心不全
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1996 年 25 巻 6 号 p. 406-410

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抄録

高齢者の巨大左房粘液腫の1治験例を経験した. 症例は81歳, 女性. 動悸, 安静時呼吸困難, 食思不振, 下肢浮腫を主訴とする心不全症状で入院し, 心エコー図にて左房を広範囲に占拠する左房粘液腫と診断した. 同時に中等度三尖弁逆流を認めた. 高度の僧帽弁狭窄様症状を呈した心不全として管理し, 軽快した後, 摘出術を施行した. 手術は, 経心房中隔左房上方切開にて左房に到達した. 腫瘍は経心房中隔に広基性に付着しており, 心内膜を含めて一塊に摘出が可能であった. さらに三尖弁逆流に対して DeVega 法による弁輪縫縮術を行った. 術後, 心房細動を合併するも自然に洞調律に復帰し, 術後36日に退院した. 80歳以上高齢者における巨大左房粘液腫はまれであり, 内科治療の困難な心不全症例に対して外科的治療で治癒しえた1治験例を報告した.

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