日本心臓血管外科学会雑誌
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冠状動脈3枝病変を伴った84歳の腹部大動脈瘤患者の治療経験
野澤 宏彰重松 宏小林 一博武藤 徹一郎田中 慶太小塚 裕古瀬 彰芹澤 剛
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1996 年 25 巻 1 号 p. 46-49

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抄録

症例は84歳男性. 1985年ごろより労作時の胸痛あり, ECG上, 下壁側壁の陳旧性心筋梗塞が疑われ, 心臓カテーテル検査で冠状動脈3枝病変 (LAD: distal で95%狭窄, LCX: proximal で75%狭窄, RCA: #2で100%閉塞) が発見された. また1990年2月より左側腹部痛があり同年7月CT, 血管造影にて最大径5.3cm大のAAAを指摘された. 当時, 高齢 (80歳) ということからPTCAやCABGの適応ではないとされ, AAAについてもそのまま follow されていた. 1993年10月CT上AAAの急速な増大傾向 (最大径7cm) を認めたので, 手術適応と判断され入院した. 同年12月CABG2枝 (LAD, RCA) を先行させ, 1994年2月AAAに対して瘤切除, 人工血管置換術を施行, 第17病日に独歩退院し, 現在社会復帰している. 本症例の治療経験から, 重症冠病変を伴ったAAAでは, 瘤破裂の危険が高い増合は, 高齢であっても, 患者にとって有益であると判断した例では積極的に冠状動脈再建を行ったほうがよいと考えられた.

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