1996 年 25 巻 1 号 p. 71-73
症例は53歳, 男性. 1994年5月ごろより腰痛が出現し, 原因不明のまま近医で経過観察されていた. 同年7月中旬ごろより疼痛は増強し, 精査加療目的で当科紹介入院となった. 腹部CT, MRI検査では腹部大動脈瘤およびその背側の後腹膜腔に血腫が広がり, L3, L4椎体の破壊がみられた. 血圧低下や進行する貧血もなく全身状態は極めて安定していた. 椎体破壊は短期間に生じていたが, 血腫の圧迫によると思われる典型的な画像所見を呈しており, 腹部大動脈瘤の chronic contained rupture と診断した. 手術は瘤壁を切開したところ大動脈後壁に約2cm大の破裂孔があり, 後腹膜腔に血塊が充満し, その背側に破壊された椎体がみられた. 腎動脈分岐下大動脈をY型人工血管にて置換した. 術後経過は良好で, 腰痛も消失した.