日本心臓血管外科学会雑誌
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腹部大動脈瘤手術における術中自己血回収輸血装置の有用性
野島 武久麻柄 達夫桂 敦史西川 忠男渡田 正二尾上 雅彦杉田 隆彰勝山 和彦森 渥視安田 隆三郎
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1996 年 25 巻 2 号 p. 86-89

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抄録

1983年より1994年9月までに当科において経験した待期的腹部大動脈瘤症例75例を対象とし, 自己血回収輸血装置の導入前後において術中無輸血で手術が可能であった症例を検討した. 装置の導入は1991年6月で, 導入前をNCS群 (n=25), 導入後をCS群 (n=50) とすると, 各群間に年齢, 手術時間, 瘤径, 出血量には差がなかったが, 無輸血手術率はNSC群で28.0%, CS群で86.0%と有意差をもって上昇した. 同種血輸血量は平均でNCS群で680±605ml, CS群で98±252mlと著明に減少し, 同種血輸血量の削減が可能であった. 術翌日の血小板数, 血清総蛋白, アルブミン, T-Bil, BUN, LDHの各値には装置使用の差は認められなかった. 装置使用にもかかわらず輸血に至った症例は50例中7例で, 400から1,000ml (平均685ml) の同種血輸血を必要とした. 今回の検討から自己血回収輸血装置の有用性が再確認されるとともに, 今後更なる無輸血率の向上には400から800ml程度の術前自己血貯血が必要と考えられた.

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