1997 年 26 巻 2 号 p. 124-127
症例は63歳, 女性. 約4年前に狭心症, 僧帽弁閉鎖不全症 (MR) のため冠状動脈バイパス術2枝(LITA to LAD, AO to D1), 僧帽弁輪形成術 (Kay法) を受けた. 心不全のため再入院, 心臓カテーテル検査でITAグラフトは開存していたがMRの増強を認め再手術を行った. 手術は胸骨正中再切開でアプローチし, 心筋保護はITAグラフトを遮断せずに逆行性持続冠灌流を行った. 僧帽弁は前尖に穿孔がみられ Carbo-Medicus 弁29mmで置換した. 術後はLAD領域の-時虚血を生じたが軽快退院した. 再手術時の胸骨正中切開による視野と逆行性持続冠灌流による心筋保護は優れているが, 灌流中にITAグラフトが遮断できない場合はITAグラフトの灌流領域に対する心筋保護に注意する必要がある.