日本心臓血管外科学会雑誌
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外腸骨動脈塞栓部が瘤化した感染性心内膜炎による僧帽弁閉鎖不全の1例
保坂 茂鈴木 章司片平 誠一郎井上 秀範進藤 俊哉吉井 新平神谷 喜八郎多田 祐輔
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1997 年 26 巻 3 号 p. 190-192

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抄録

感染性心内膜炎 (IE) に合併する動脈塞栓において, その塞栓部位が瘤化し感染性動脈瘤となることは少なく, その部の炎症遷延のためIEに起因した僧帽弁閉鎖不全 (MR) に対する手術時期を延ばさざるをえなかった1例を経験した. 症例は64歳の男性で, 右膝窩動脈, 左膝窩動脈, 左外腸骨動脈に異時性に塞栓症が生じ, その後の検査で重症MRが認められたが, 起因菌は同定できなかった. 6週間の抗生剤投与にもかかわらず炎症所見がつづき, 左外腸骨動脈塞栓閉塞部が瘤化していたため, 僧帽弁置換術と左外腸骨動脈瘤切除兼大腿-大腿動脈間バイパス術を一期的に行った. 僧帽弁の vegetation は既に器質化していたが, 瘤壁は活動期感染像を認めた. 塞栓症を合併したIEの外科治療に際しては, 術前に感染性動脈瘤の潜在を頭蓋内ばかりでなく全身的にも十分に検索すべきと考える.

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