日本心臓血管外科学会雑誌
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人工血管感染に対する再手術症例の検討
伊藤 健造北川 哲也北市 隆福田 靖筑後 文雄川人 智久田埜 和利堀 隆樹吉栖 正典加藤 逸夫
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1997 年 26 巻 1 号 p. 40-45

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抄録

治療に難渋した人工血管感染5症例について検討した. 年齢は57~81歳, 初回手術時の基礎疾患は Leriche 症候群1例を含む閉塞性動脈硬化症3例, 悪性腫瘍の動脈浸潤2例であった. 人工血管感染部位は鼠蹊部3例, 膝上部1例, 腹部1例で, うち4例の起炎菌は Staph. aureus (MRSA3例) であった. 感染原因となった人工血管の手術から感染発現までの期間は, 腹膜炎症例は10日と短く, 末梢側の感染では2か月~14年と長かった. 腹膜炎例を除いた症例での感染巣のドレナージ, 洗浄等の保存的治療期間は40~64 (平均50) 日であった. 手術はグラフトの感染部位のみの除去またはグラフト全部を摘出し, 新たな血行再建術を施行した. 感染グラフトはPTFE4例, Woven-Dacron 1例で, 再手術にも同様のグラフトを用いた. 感染部を避けるため, 閉鎖孔経由など3例で別経路を用いた. 感染人工血管の全摘出が困難な症例では, 感染巣部のみの人工血管摘除と健常な周囲組織での再建術を行い良好な結果を得た. 手術成績は全例生存, 敗血症や下肢切断等の重篤な合併症は認めなかった. 再手術から現在までの8か月~8年間, 全例開存し再感染も認めていない.

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