1997 年 26 巻 1 号 p. 69-72
症例は70歳男性. 動悸を主訴に来院し, 胸部X-p, 心エコーで心嚢水貯留認めた. 画像診断により, 心嚢内に25mm径の腫瘤を認めた. 心嚢穿刺では淡血性の心嚢水を得, 心膜腫瘍を疑い手術を施行した. 腫瘍は心嚢膜に接するように発育しており, 連続的な拡大や, 播種を認めなかった. 腫瘍を心嚢膜と一塊に切除しえた. 病理学的に悪性中皮腫と診断するのが妥当であると考えられた. 悪性心膜中皮腫は瀰慢性に発育することが多く, 大半は外科的切除が不可能であるが, 本症例のように限局性に発育する場合もあり, その場合早期診断はもちろん, 完全切除も可能である.