日本心臓血管外科学会雑誌
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血中トロンボモジュリン値からみた腹部大動脈瘤手術時の血管内皮障害の判定
杉田 隆彰渡田 正二勝山 和彦中嶋 康彦山本 理江森 渥視
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1997 年 26 巻 2 号 p. 87-89

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抄録

近年, 血中トロンボモジュリンは血管内皮細胞の障害程度を示す新しい分子マーカーとして注目されている. われわれは腹部大動脈瘤手術中の血管内皮障害を調べる目的で血中トロンボモジュリンを測定したので報告する. 対象は腎動脈下の腹部大動脈瘤に待機的手術を施行した9例で, 性別は全例男性, 年齢は46~74歳 (平均64.9歳) であった. 血中トロンボモジュリンの測定は手術前, 大動脈遮断直前, 大動脈遮断解除直後, 大動脈遮断解除1時間後, 3時間後, 18時間後に, 一側の大腿静脈より採血し, EIA法にて行った. トロンボモジュリンは大動脈遮断直前には術前より有意に低下したが, 遮断解除3時間後に増加し, 術前値との有意差は消失し, 以後とくに有意な変化は認められなかった. これらの結果から, 腹部大動脈瘤手術中は血中トロンボモジュリン値が増加するような血管内皮障害は発生していないと考えられた.

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