日本心臓血管外科学会雑誌
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間欠的微温血液心筋保護法
長時間大動脈遮断症例での有用性
林田 信彦丸山 寛田山 栄基友枝 博尾田 毅川野 博川良 武美青柳 成明
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1998 年 27 巻 4 号 p. 227-232

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抄録

長時間大動脈遮断症例に対する間欠的微温血液心筋保護法の効果を検討した. 120分以上の大動脈遮断を必要とした冠動脈バイパス術40例を対象とし, 心筋保護液により4℃の低温晶質心筋保護液群 (Cold 群) あるいは30℃の微温血液心筋保護液群 (Tepid 群) に分類し, その心筋保護効果を心機能, 心筋逸脱酵素および臨床成績により比較検討した. 平均大動脈遮断時間は Cold 群: 150±10, Tepid 群: 149±4分で体外循環時間, 未梢吻合数および動脈グラフト数にも有意差を認めなかった. 大動脈遮断解除後の自然心拍再開率は Tepid 群で高率 (p=0.01) で, 術後の左室-回拍出仕事係数も同群で有意に良好に回復した (p=0.02). 術後挿管時間 (Cold 群: 71±26, Tepid 群: 20±2時間, p=0.04), 術後48時間までの総CK-MB遊出量 (Cold 群: 1,244±141, Tepid 群: 726±85IU×hr/l, p=0.01), 総カテコールアミン必要量 (Cold 群: 21.4±4.5, Tepid 群: 10.0±1.4mg/kg/48hr, p=0.02) および術後低心拍出量症候群の発生率 (Cold 群: 45%, Tepid 群: 10%, p=0.03) はTepid 群で有意に低値であった. 術後早期死亡を Cold 群に3例 (15%) 認め, Tepid 群には認めなかった (p=0.12). 以上より, 間欠的微温血液心筋保護法は長時間大動脈遮断症例に対しても安全に使用でき, 従来の低温晶質心筋保護法に比較し良好な心機能および臨床成績をもたらし, この方法の有用性が示唆された.

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