1998 年 27 巻 1 号 p. 24-29
赤十字血液センターの協力を得て, 保存期限の長い冷凍赤血球やMAP赤血球として開心術術前自己血貯血を行い, その有用性について検討した. 貯血109例の同種血無輸血率は93.6%であり (非貯血68例35.3%), 大量出血が予想される再手術や大動脈手術症例でも冷凍赤血球として1600~2000mlの貯血を行うことで75%で同種血輸血を要しなかった. 貯血期間が4週間以上の症例では貯血によるヘモグロビン値の低下はなく安全な貯血が可能であり, 保存期限に余裕があるため手術日決定前から貯血が始められ, 手術延期時にも対処可能であった. 血液センターとの連携による自己血の処理・保管・搬送の面で安全性について問題はなく, 中小規模の病院での術前貯血に有用な方法であると考える. しかし自己血採血後に症状の悪化した症例が2例あり, 貯血に際しては適応症例の吟味が必要であるとともに, 貯血の必要性を加味した貯血計画をたてるのが望ましい.