1998 年 27 巻 4 号 p. 256-259
59歳, 女性. 主訴は易疲労感. 20歳で高血圧を指摘され, 51歳時に, 他医で大動脈炎症候群による異型大動脈縮窄症と診断された. 上肢血圧は降圧剤投与下で200mmHg前後で, 1年前から家事のみで容易に疲労するようになった. 大動脈造影では, 横隔膜レベルと腎動脈レベルに高度な狭窄を認め, 右腎動脈は閉塞していた. 胸部CTでは, 下行大動脈以下に広範な石灰化を認めた. 手術は胸骨正中切開を恥骨上部まで延長して開腹し, 径16mmの人工血管にて上行大動脈から腹部大動脈へのバイパス術を行った. 吻合部瘤を防ぐため, 縫合は石灰化のないなるべく健常と思われる部分にフェルトで補強しながら行った. 術後6カ月で上肢血圧は, 130mmHgに低下し, 易疲労感も消失し, 良好な結果が得られた.