1998 年 27 巻 4 号 p. 260-262
症例は64歳, 女性で, 労作時呼吸困難を主訴とし, CTで慢性B型大動脈解離と診断され, 紹介された. 遠位弓部大動脈は最大径7cmに達し, 偽腔の一部に血栓を伴っていた. 手術は循環停止下, 大小4箇所の intimal tear を直接閉鎖し, 解離内膜, 外膜を偽腔遠位側で固定した後, 下行大動脈の aortic tailoring を施行した. 術後経過は良好で無輸血で経過し, 第22病日に退院した. 術後3年後に施行したCTでは, 遠位弓部から下行大動脈にかけての偽腔は消失し, 胸腹部大動脈の限局した解離が残存したものの, 大動脈の拡大は認めなかった. 手術侵襲, 術後合併症を軽減する本術式は, 慢性B型大動脈解離手術の一つの option として有効であった.