日本心臓血管外科学会雑誌
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狭心症, 腹部大動脈瘤に対する心拍動下冠状動脈バイパス術とY型人工血管置換術一期的施行の1例
大島 永久木山 宏今関 隆雄
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1998 年 27 巻 5 号 p. 327-330

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抄録

症例は71歳, 男性. 拍動性腹部腫瘤の増大を主訴として当院受診し, 直径7.8cmの腹部大動脈瘤と診断. 術前冠状動脈造影で左前下行枝seg6~7の long lesion を認め, 同時手術の適応と診断した. 術前ヘモグロビン値 (Hb) 10.6g/dlと貧血状態であったが, エリスロポエチン投与により800mlの術前貯血を行い, 体外循環非使用の心拍動下冠状動脈バイパス術とY型人工血管置換術の同時手術を同種血無輸血で施行し得た. 手術時間6時間18分, 冠状動脈遮断時間14分であった. 術中出血量は600mlで, 術後最低Hbは9.1g/dlであった. 術後経過は順調でそれぞれの単独手術とほぼ同じ第15病日に退院した. 体外循環を使用しないCABGは体外循環施行困難症例や低左心機能症例のみならず, 低侵襲で凝固機能への影響が少ないことから, 本例のような同時手術, 貧血患者に対しても有用であると考えられた.

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