日本心臓血管外科学会雑誌
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大網充填術が奏効した胸腹部大動脈瘤術後MRSA感染の1治癒例
矢野 浩巳石丸 新石川 幹夫小櫃 由樹生
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1998 年 27 巻 6 号 p. 380-382

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抄録

症例は69歳, 男性. Crawford III型の胸腹部大動脈瘤に対して人工血管置換術を行った. 術後8日目より炎症所見が著しくなり, 創部皮下膿瘍を形成した. 排膿および胸腔ドレーン排液よりMRSAが検出され創部から胸腔内への感染と診断し, 再開胸術を施行した. 感染組織を掻爬した後, 人工血管除去による再建術を選択せず大網充填術を行い, 術後3日間は1%イソジン液による持続胸腔内洗浄を行った. 炎症は鎮静化し, 軽快退院した. 近年, MRSAによる人工血管感染は増加し治癒例も散見されるが, 本例のごとく胸腹部における人工血管を温存しえた例は稀であることから, 文献的考察を加えて報告した.

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