1998 年 27 巻 1 号 p. 67-70
症例は, 29歳男性, 生後6か月時に純型肺動脈狭窄症にて, 肺動脈弁切開術を施行された. 29歳時, 径14cm大の上行大動脈瘤と大動脈弁拡張症が認められた. 瘤は巨大で胸骨裏面に癒着し, 胸骨正中切開は危険であると考えられた. また, 大動脈弁閉鎖不全症のため大腿動脈バイパスによる冷却は, 左室の過伸展をきたすと考えられたため, 左側開胸を行い, 上行大動脈から近位弓部まで剥離し大動脈を遮断可能とし, 左心系の減圧として肺動脈脱血を加えた上で胸骨正中切開を行った. 循環停止後, 逆行性脳灌流を併用しながら composite graft による大動脈基部置換術を施行し良好な結果を得た.