日本心臓血管外科学会雑誌
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開心術におけるバンコマイシンの薬物動態に関する臨床的検討
山村 光弘青木 啓一朝倉 利久田所 雅克古田 昭一宮本 巍
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1998 年 27 巻 2 号 p. 71-75

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抄録

開心術における予防的抗生剤としてバンコマイシン (以下VCMと略) を投与し, 開心術におけるVCMの薬物動態を検討した. 聴力障害がなく腎障害も認めない初回・待期的開心術8例 (男性4例・女性4例, 平均年齢58.0±7.9歳) を対象とした. 術式はCABG 5例, MVR+TAP 1例, 心房中隔欠損孔閉鎖術1例, 左房粘液腫摘出術1例であった. 皮膚切開開始前にVCM1gを約40~50分かけて点滴静注し, 投与終了時より血中濃度を20分ごとに測定した. また人工心肺開始時に右心耳組織の一部を採取し, 組織内濃度を測定した. 血中濃度は投与終了後に55.3±10.1μg/mlの最高値をとりその後徐々に減少し, 体外循環中は7.6~9.9μg/mlで経過した. 右心耳の組織内濃度は18.9±6.9μg/mlで, 血中濃度との比は0.34であった. 通常のブドウ球菌に対する有効血中濃度は2.0~6.5μg/mlとされており, 手術開始前のVCM1gの予防的投与で有効血中濃度は維持されると考えられた.

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