日本心臓血管外科学会雑誌
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虚血性僧帽弁閉鎖不全症の予後
左室形態および左室局所壁運動の及ぼす影響について
馬場 寛大川 育秀外山 真弘田中 常雄橋本 昌紀松本 興治
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1999 年 28 巻 5 号 p. 293-298

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抄録

虚血性僧帽弁閉鎖不全症 (IMR) のメカニズムとして, 左室形態, 局所壁運動が注目されているが, これらが外科治療後にいかなる影響を及ぼすかは明らかでない. IMRに対して外科治療を施行した30例について血行動態, 左室局所壁運動, 左室形態, 遠隔期成績を検討した. 左室形態の評価は左室造影より長軸短軸比を求め, その拡張末期の値をDR, 収縮末期の値をSRとした. また, 球形度 (左室容積/長軸を直径とする球容積) を求め, 拡張期をDSI, 収縮期をSSIとした. 5年生存率は10.5%で, 術後心臓死症例と生存例では術前のIABP使用, 術前よりのICU滞在, 複数回の心筋梗塞の既往, DR, DSI, SSIにおいて有意差を認めた. 多変量解析で心臓死の単独危険因子はDRの低値, 前基部および心尖部の左室壁運動の低下であった. 左室が球形に近い症例ではIMRに対する外科治療成績は不良で, そのさいには左室形態をも考慮に入れた左室形成術を含む新たな手術法の開発が必要と考えられた.

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