1999 年 28 巻 2 号 p. 82-86
心室中隔欠損 (VSD) はもっとも頻度の多い先天性心疾患であり, 自然閉鎖が望めない症例では, 一般に幼少時に外科的治療が行われている. 従って高年齢で手術を施された症例はまれである. われわれは, 66歳の肺高血圧を伴うVSDを経験し, 外科治療を行った. 症例は66歳, 男性. 61歳で初めてVSDを指摘された. その後徐々に症状が増強し, 65歳時では動悸も認めるようになった. 心臓カテーテル検査では, 肺高血圧を認めたが, Qp/Qsは2.9, Rp/Rsは0.16で手術適応と考えられた. VSDは膜様部欠損で直径18mmと大であり patch 閉鎖した. 術後, 肺動脈圧は正常化し, 現在元気に社会生活を送っている. なお, 術中採取した肺の組織検査では血管病変は軽度で Heath-Edwards 分類の第I度であった. 高年齢者, 特に40歳以降にみられるVSDはまれであることから主として手術適応について考察した.