日本心臓血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1883-4108
Print ISSN : 0285-1474
ISSN-L : 0285-1474
開心術症例におけるテイコプラニンの薬物動態に関する臨床的検討
朝倉 利久青木 啓一榎本 佳治稲井 理仁古田 昭一高橋 玉実稲田 英一
著者情報
ジャーナル フリー

2001 年 30 巻 5 号 p. 226-229

詳細
抄録

テイコプラニン (TEIC) の開心術における周術期感染症の予防および治療に必要な至適投与法について検討した. 対象は初回待機的開心術14例で, TEIC 400mg投与群をI群 (7例), 800mg投与群をII群 (7例) とした. TEICは麻酔導入直後から20分間かけて末梢静脈より投与した. 血清濃度 (I群: II群) (μg/ml) は, 投与終了2分後に最高血清濃度 (57±11:139±39) に達し, 以後漸減し60分後には (26±7:55±10) となった. 体外循環 (ECC) 開始により血清濃度は急速に低下 (17±5:31±7) し, ECC開始60分後には (11±2:27±6), ECC終了2分後には (8±2:23±7), ECC終了60分後には (8±3:23±6), ICU入室時には (7±2:22±5) となった. MRSAを含めたグラム陽性球菌を想定した場合の開心術症例におけるTEIC投与法は, 周術期感染症の予防目的には400mg 1回投与, 感染性心内膜炎の治療目的には800mg 1回投与することが必要である. また, ECC開始時 (とくに7時間以上の長時間手術が想定される場合) とICU入室時に初回投与量の半量を追加投与することが推奨された.

著者関連情報
© 特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top