日本心臓血管外科学会雑誌
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体外循環におけるヘパリン濃度の適正管理に関する研究
高橋 皇基星野 俊一岩谷 文夫猪狩 次雄佐戸川 弘之小野 隆志高瀬 信弥佐藤 一也佐藤 晃一三澤 幸辰
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2001 年 30 巻 5 号 p. 230-236

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抄録

体外循環中の抗凝固療法の指標であるACTは血液希釈, 低体温により延長するため, ヘパリン投与不足や硫酸プロタミンの過剰投与による凝固線溶異常, 出血量増加を生じることがある. 著者は開心術症例68例 (成人32例, 小児36例) を対象に体外循環中のヘパリン濃度を一定に保つヘパリン投与法 (HC群) とACTを基準とするヘパリン投与法 (NC群) を比較し, 適正な抗凝固療法について検討した. ヘパリン総投与量はHC群で有意 (p<0.01) に増量され, 硫酸プロタミンはHC群で有意 (p<0.01) に減量された. 成人例では凝固線溶系因子に有意差を認めず, 小児例ではTAT, PIC, D-dimer が体外循環終了時にHC群で有意 (p<0.05) に低値を示した. 手術・止血時間, 術中・術後出血量, 輸血量に有意差を認めなかった. 小児例では従来法のヘパリン投与量では著明に不足となり, 凝固因子温存のためにはヘパリン濃度管理がとくに有用であると考えられた.

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