日本心臓血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1883-4108
Print ISSN : 0285-1474
ISSN-L : 0285-1474
肝硬変を合併した胸腹部大動脈瘤破裂の1治験例
花房 雄治大北 裕安藤 太三荻野 均田鎖 治湊谷 謙司北村 惣一郎
著者情報
ジャーナル フリー

2001 年 30 巻 5 号 p. 255-258

詳細
抄録

肝硬変を合併した胸腹部大動脈瘤破裂に対して人工血管置換術後に, 難治性腹水が遷延し, 腹腔-大腿静脈シャント術を施行し, 良好な成績を得たので報告する. 症例は52歳, 男性で, 以前より肝硬変, 食道静脈瘤の治療を受けていた. 4カ月前より39℃台の発熱が持続し, 2カ月間で瘤径が60mmから80mmに拡大した. 腰背部痛も出現したため, 感染性胸腹部大動脈瘤破裂と診断した. 術前の評価では Child 分類は grade Bで, 食道内視鏡, 臨床所見などより総合的に耐術と判断し, 胸腹部大動脈人工血管置換, 腹部4分枝, 肋間動脈再建, 大網充填を施行した. 術後難治性腹水が出現し, 新鮮凍結血漿の投与でも, 低蛋白血症は改善せず, 腹水貯溜が遷延するため, 第29病日に腹腔-大腿静脈シャント術を施行した. 術後, 腹水貯溜と臨床症状は消失し, 第49病日に退院した. Child 分類 grade Bの肝硬変を合併する大血管術後の難治性腹水に対し, 腹腔-大腿静脈シャント術を施行し良好な結果を得た.

著者関連情報
© 特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top