2001 年 30 巻 6 号 p. 285-289
腹部大動脈瘤を合併した胸部大動脈瘤に対する外科治療の優先順位や手術時期, 手術方法, 補助循環法, 手術成績について検討した. 症例は1982年1月から1999年3月までの24例を対象とした. 治療方針はいっぽうの瘤径の拡大が軽度であれば分割手術を基本とし, 両方に6cm以上の拡大を認めた場合は一期的手術を考慮し, 腹部大動脈瘤が4cm前後であれば経過観察とした. 手術は弓部大動脈瘤では上行大動脈送血を基本とし, 脳保護法としては逆行性脳灌流法を使用した. 病院内死亡は24例中3例 (12.5%) であった. 腹部大動脈瘤を合併した胸部大動脈瘤症例に対し, 人工心肺における順行性送血の使用と aortic no touch technique の使用が脳合併症対策として重要であると考えられた. また, 瘤径に応じた分割手術の選択によって良好な成績が得られたが, 画像診断による厳重な経過観察が必要であった.