日本心臓血管外科学会雑誌
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僧帽弁腱索断裂により心不全の進行をみた閉塞性肥大型心筋症の1例
矢野 浩己小長井 直樹前田 光徳三坂 昌温松丸 泰介工藤 龍彦石丸 新
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2002 年 31 巻 2 号 p. 132-135

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抄録

症例は59歳男性.15年来閉塞性肥大型心筋症(HOCM)で,βブロッカーを投与中であった.本年6月より突然の心不全の進行を認め,経食道心エコーにて僧帽弁腱索断裂と診断した.まず内科的治療にて症状を改善させたのちに,開心術とした.僧帽弁前尖と後尖に腱索断裂を認めたため,人工弁置換術を施行し,腱索の病理組織診断は粘液変性であった.術後経過は良好であり,また心エコーでは,左室流出路圧較差は術前55mmHgから術後0mmHgとなり,狭窄は消失した.HOCMに腱索断裂を合併すると僧帽弁逆流による心不全の急性増悪をきたすため,経食道心エコーなどによる早期診断と時期を逸することなく外科的治療を行うことが必要と考えられた.

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