日本心臓血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1883-4108
Print ISSN : 0285-1474
ISSN-L : 0285-1474
先天性乳頭筋異常が僧帽弁閉鎖不全の一因に関与した高齢者の1例
東田 隆治市川 誠一新浪 博伴 哲雄須田 優司小笠原 英継竹内 靖夫大川 真一郎
著者情報
ジャーナル フリー

2002 年 31 巻 2 号 p. 156-159

詳細
抄録

症例は71歳,男性で,平成元年(60歳時)に心不全で当院内科に入院した.心房細動,僧帽弁閉鎖不全および三尖弁閉鎖不全の診断で内服治療を開始した.その後も心不全,脳梗塞,肺炎で計13回の入退院をくり返していた.平成12年2月(71歳),心エコー,心臓カテーテル検査の結果,手術適応となり当科紹介となり,同年3月,僧帽弁置換術および三尖弁輪形成術を施行した.僧帽弁は前,後尖とも中等度に肥厚し,腱索も肥厚と癒合が認められた.さらに,前側乳頭筋より僧帽弁前尖の弁基部に直接付着する乳頭筋がみられ,前尖の可動性を制限していた.病理組織所見では,古いリウマチ性と思われる変化に加えて,1ヵ所に横紋筋組織(乳頭筋)が前尖の弁基部へ走行していた.臨床的に乳頭筋前尖接合が僧帽弁閉鎖不全に関与したとする症例報告はこれまで少ないことから,若干の文献的考察を加えて報告した.

著者関連情報
© 特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top