2002 年 31 巻 3 号 p. 187-190
胸痛を契機に発見された,希な先天性心疾患である冠動脈肺動脈瘻に対し肺動脈内腔側からの瘻孔閉鎖術を施行したので報告する.症例は51歳,女性.労作時前胸部痛の精査のため施行された冠動脈造影検査にて,左前下行枝と回旋枝から起始し,肺動脈本幹に流入する冠動脈肺動脈瘻を認めた.左右短絡量は5.8%と少量であったが,瘻孔以下の冠動脈造影が不良であったことから,胸痛は冠動脈肺動脈瘻により心筋虚血が発生した可能性が高いと判断し手術適応とした.完全体外循環心拍動下に肺動脈を縦切開し,内腔側に確認された二つの瘻開口部を直接縫合閉鎖した.術後経過は良好であり,胸痛の再発は認めなかった.術後冠動脈造影上,肺動脈への流入こそ認めなかったが,冠動脈肺動脈瘻は全体にわたり造影された.より確実な瘻孔閉鎖と瘻への血流遮断のためには,さらに瘻結紮術を行うべきであった.