2002 年 31 巻 4 号 p. 292-295
症例は38歳男性,突然の胸背部痛で緊急入院し,Stanford type A大動脈解離にて上行弓部大動脈人工血管置換術を施行した.左下肢の血流障害も認め,左右大腿動脈バイパス術を施行した.術後縦隔炎を合併し,一期的に大網充填術を施行し軽快した.術後1ヵ月目に正中創上部の発赤腫脹が出現した.その後,背部痛が出現し,胸部CTと血管造影で吻合部仮性動脈瘤を認めた.緊急にて,再度人工血管置換術を施行し,術後経過は良好であった.人工血管置換術後の縦隔炎吻合部仮性動脈瘤は,治療に難渋することが多い.縦隔炎に対し,一期的に大網充填を施行し有用であった.吻合部仮性動脈瘤に対して,再度人工血管置換術を施行したが,人工血管の感染があれば同種大動脈の使用も考慮する必要がある.