日本心臓血管外科学会雑誌
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腸管壊死を合併したA型急性大動脈解離の1手術治験例
中村 喜次安藤 太三田鎖 治荻野 均佐々木 啓明花房 雄治北村 惣一郎
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2002 年 31 巻 5 号 p. 347-349

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抄録

患者は59歳,男性.突然の上腹部痛で発症.CTでA型急性大動脈解離と診断した.解離は上行大動脈から腹部大動脈まで存在し,中等量のpericardial effusionを認めた.収縮期血圧90mmHgと心タンポナーデの症状を呈しており,腹部所見の存在と合わせて緊急手術の適応と判断した.胸骨正中切開し,心嚢内血腫を除去した.経食道エコーでエントリーは弓部に存在したため脳分離体外循環下に上行弓部置換を施行した.体外循環を離脱し,止血を確認後,試験開腹した.小腸は色調不良で分節的に壊死に陥っていたため,Treitz靱帯より50cm肛門側から4.5mにわたり広範囲小腸切除し,残存小腸を端々吻合した.なお上腸間膜動脈へのバイパスは解離が末梢まで及んでいたため断念した.術後20日目,人工呼吸器を離脱.術後25日目,経口摂取を開始した.以後は順調に回復し,術後76日目に退院した.

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