日本心臓血管外科学会雑誌
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腹腔動脈瘤に急性大動脈解離を発症した1例
松本 春信進藤 俊哉明石 興彦窪田 健治小島 敦夫石本 忠雄伊従 敬二小林 正洋多田 祐輔
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2002 年 31 巻 5 号 p. 359-362

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抄録

腹腔動脈瘤は希な疾患であるが,破裂した後の手術では高率に死亡する.したがって破裂前に発見した場合は,無症状であっても手術による治療が必要である.今回われわれは腹腔動脈瘤に急性大動脈解離を発症した1例を経験したので報告する.症例は60歳男性.人間ドックで偶然腹腔動脈瘤を指摘され当院紹介となった.精査にてIIIB型大動脈解離を合併した腹腔動脈瘤(最大径3cm)と診断し手術を行った.術中所見では腹腔動脈瘤は大動脈分岐起始部から瘤状に変化しこれに連なる脾動脈瘤も存在した.腹腔動脈瘤を試験的に遮断すると固有肝動脈の拍動は良好であったため,血行再建は不要と判断し動脈瘤の切除のみ施行した.術後-過性に肝機能障害を認めたがそれ以外に合併症もなく術後第24病日に退院となった.本症例のように,上腸間膜動脈を経由した肝への血流が十分保たれていれば腹腔動脈の血行再建は必ずしも必要ではないと思われた.

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