2002 年 31 巻 1 号 p. 3-7
慢性期の偽腔開存型大動脈解離に対するステントグラフト内挿術後の胸水貯留について検討した.16例についてCTより術前胸水ありをP群,術前胸水はなく術後胸水出現ありをE群,出現なしをN群と分類した.各群間で年齢,動脈最大径,手術施行時期,術後の発熱期間,白血球数,CRP,呼吸器合併症を比較した.P群は4例,E群は4例,N群は8例であった.P群の胸水は術後も不変であった.年齢,動脈最大径,手術施行時期,白血球数,CRP値およびそれらの推移は各群で差がなかった.発熱期間はE群とN群,E群とP群の間で有意差を認めた.全例で呼吸器合併症はなかった.本法が原因とみられる胸水貯留は25%あり,発熱が遷延化したが呼吸器合併症はなかった.本法の呼吸機能に与える影響は比較的低いものと考える.