2002 年 31 巻 6 号 p. 404-407
大動脈炎症候群が疑われた腹部大動脈縮窄症に胸部下行大動脈瘤を合併した症例に対し下行大動脈置換と下行-腹部大動脈バイパス術を行い良好な結果を得たので報告する.症例は67歳,女性.左側胸部痛精査のCT,DSAで最大径60mmの下行大動脈瘤と腎動脈分岐後の腹部大動脈縮窄を認めた.さらに上腸間膜動脈から下腸間膜動脈に著しく拡張したmeandering mesenteric arteryを介した側副血行路がみられた.血液検査上炎症所見はなかったが形態学的に大動脈炎症候群が疑われた.手術は左第4肋間開胸と左腹部斜切開でF-Fバイパス下に下行大動脈瘤切除,人工血管置換を行い,下行置換のグラフトに作製した分枝と大動脈分岐上の腹部大動脈との間に後腹膜経路でバイパス術を行った.術後経過は良好で術後42日で軽快退院した.大動脈炎症候群では術後の炎症再燃,吻合部動脈瘤の発生が危惧されるが,術後約1年の経過観察中合併症なく社会復帰している.