2003 年 32 巻 5 号 p. 280-284
症例は52歳,男性.Buerger病の診断で1987年に両側腰部交感神経節切除術,8mm double velour knitted Dacron (Microvel)による腹部大動脈-右大腿動脈バイパス術を受けた.2002年,右鼡径部拍動性腫瘤を自覚し入院した.吻合部動脈瘤を疑い手術を行ったが,瘤を切開すると,遠位側吻合部は問題なく,その近位約1.5cmの部位から約3cmにわたり人工血管の前壁のみが欠損し仮性動脈瘤を形成していた.人工血管破綻による非吻合部仮性動脈瘤と診断した.破綻部を10mm woven double velour Dacron (Hemashield Gold)で置換し手術を終了した.術後経過の長い患者で鼡径部に人工血管が存在する場合は,人工血管破綻による仮性動脈瘤の形成に留意するべきである.