日本心臓血管外科学会雑誌
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ITP合併LMT病変を有するAP患者にoff-pump CABGを施行した1例
坂口 昌幸竹村 隆広島村 吉衛津田 泰利岩朝 静子
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2003 年 32 巻 2 号 p. 86-89

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抄録

特発性血小板減少性紫斑病(idiopathic thrombocytopenic purpura: ITP)を合併した狭心症患者に,人工心肺を用いない冠動脈バイパス術(off-pump CABG)を施行した1例を経験した.症例はITPの既往がある63歳男性.胸痛を主訴に来院.冠動脈造影検査で左冠動脈主幹部に90%狭窄を認め,軽動作で胸痛が頻回となるため早急な手術が考慮された.このとき血小板が2.3万/mm3であった.大量γグロブリン投与を開始し第3日後血小板4.1万/mm3と軽度回復したところで,準緊急でoff-pump CABG×2(LITA-LAD,rad A-Cx)を施行した.術中術後出血の合併症はなく,経過は良好でバイパスは開存していた.最近のoff-pump手術手技の進歩とその低侵襲を考慮すると,ITP合併症例の冠動脈バイパス手術では,術前のγグロブリン大量静注療法と,人工心肺を用いない心拍動下手術の組み合わせは,出血を最小に抑えることが可能で,本疾患合併症例に有用な戦略になると考えられた.

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