日本心臓血管外科学会雑誌
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経食道心エコー検査にて左房内壁浸潤を診断できた左房粘液肉腫の1例
鈴木 暁長 泰則芳賀 佳之加藤木 利行
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2004 年 33 巻 4 号 p. 278-281

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抄録

症例は60歳,女性.うっ血性心不全のため入院し体部CTと経胸壁心エコーにて左房腫瘍を疑われ,経食道心エコーにて左房腫瘍と左房内壁への腫瘍浸潤を診断された.肺水腫となり緊急手術にて心房中隔に付着した3.5×4.0×2.0cmの球状の腫瘍を摘出し,病理組織診断では粘液腫様の所見とring structureの形成のほかに細胞の密な部分も認めた.CA125値が術前167.7U/単位と高値を示したが術後80日で正常化した.術後14ヵ月の経胸壁心エコーにて腫瘍の再発を認め,経食道心エコーにより左房腫瘍と左房内壁に左心耳まで及ぶ腫瘍の浸潤像を認めた.再手術では左房腫瘍の再発と左心耳・右肺静脈まで及ぶ腫瘍浸潤を認め浸潤部位を含めた腫瘍摘出術を行った.病理組織所見では粘液腫様部分,ring structure形成部分に加え核分裂像と壊死巣を認め粘液肉腫と診断された.腫瘍の再発のため初回手術後20ヵ月に死亡した.きわめて希な左房粘液肉腫の症例を経験した.腫瘍の左房内壁への浸潤の診断には経食道心エコーが必須でCA125の有用性も示唆された.手術的切除を行ったが予後不良であった.

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